- 春休みの仙台は、午前8時台に動けるかどうかで体験の質が変わる
- 定禅寺通りは桜の季節より「ケヤキの芽吹き前」の時期が静かでいい
- 国分町は昼に歩くと別の顔がある——夜の喧騒を知っている人ほど驚く
- 仙台城跡は午前中に行かないと、観光バスと時間が重なる
- 「牛タン通り」は昼11時を過ぎると行列が始まる。10時45分が分岐点
3月の仙台に来た理由は、桜ではなかった
正直に言う。桜を目当てに来たわけじゃない。
3月末の仙台は、ソメイヨシノがまだ硬い蕾のまま風に揺れている。観光サイトを見れば「お花見シーズン直前」と書かれているが、実際に歩いてみると木々はまだ茶色くて、ちょっと拍子抜けする。それでも私がこの時期を選んだのは、春休みの人波が「桜の名所」に集中する前の、この微妙な空白に何かあると思っていたからだ。
仙台駅に着いたのは朝7時過ぎ。ホームに降りた瞬間、思ったより冷たい風が来た。コートの前を合わせながら改札を出る。駅の西口はまだ人が少ない。コンビニのコーヒーを買って、そのまま歩き出した。
仙台の旅情報では、季節ごとの混雑パターンも確認できる。春休みに動くなら、事前に目を通しておくといい。
定禅寺通り、ケヤキが芽吹く前の静けさ
仙台といえば定禅寺通りのケヤキ並木、とよく言われる。夏の青々とした緑のトンネルや、冬のLEDイルミネーションの写真をSNSで見たことがある人は多いだろう。でも3月末のこの通りは、葉がまだほとんどない。
枝だけが空に広がっている。
それが、思いのほかよかった。葉がないから空が広い。朝の光が枝の隙間から斜めに落ちてきて、石畳の上に細い影を作っている。歩いている人は犬の散歩をしている地元の人と、ランニングをしている人くらい。観光客の姿はほぼない。「葉がない時期に来てしまった」と最初は思っていたのだが、完全に予想が外れた。
中央分離帯の緑道に入ると、石畳が少し湿っていた。昨夜雨が降ったらしい。足元に落ちたケヤキの古い葉が、踏むとくっきりと形を残す。空気に土の匂いが混じっていた。春の匂いというより、冬の終わりの匂いだ。
定禅寺通りの緑道は朝8時台がいい。9時を過ぎると近くの駐車場に車が入り始め、エンジン音と排気ガスで雰囲気が変わる。ベンチも空いているので、コンビニコーヒーを持って座るだけで十分な時間になる。
仙台城跡、観光バスが来る前に着くこと
定禅寺通りを歩いた後、青葉山のほうへ向かった。仙台城跡、通称「青葉城」だ。
バスでも行けるが、私は歩いた。30分かかる。途中、急な坂道が続く区間があって、コートを着たままだと汗をかく。荷物が重い人は素直にバスに乗ったほうがいい。私は荷物を最小限にしていたので、なんとかなった。
城跡に着いたのは9時前。まだ観光バスが来ていない時間だった。伊達政宗像の前に立っている人は、私を含めて3人だけ。像の背後に広がる仙台市街と、その向こうに霞んで見える山の稜線。空気が澄んでいるわけでも、特別に晴れているわけでもなかったが、静かさがよかった。
10時を過ぎた頃、観光バスが2台来た。一気に人が増えた。その変化は劇的で、さっきまでの静けさが嘘みたいだった。この場所は「いつ来るか」がすべてだと思った。午前9時台に来て、10時前には下りる。それが正解だ。
仙台城跡への徒歩ルートは、春でも朝は路面が滑りやすい箇所がある。特に青葉山公園内の石段は、前夜に雨が降った翌日は注意が必要だ。靴底の薄いスニーカーで来ると足元が不安定になる。
国分町を昼に歩く、という少し変な選択
城跡から下りて、国分町へ向かった。
夜の歓楽街として知られているこのエリアを、昼間に歩く人はあまりいない。実際、昼の国分町はひっそりしている。シャッターが閉まった店が並んでいて、夜の賑やかさを想像しながら歩くと、少し不思議な感覚になる。
ただ、昼の国分町にも動いている場所はある。路地の奥に入ると、古い雑居ビルの1階に昼営業をしている定食屋があった。手書きの品書きが扉の横に貼ってある。店に入ると、カウンターに3席だけ。常連らしき人が一人、黙って味噌汁を飲んでいた。私が入ると、店の人が何も言わずに水を置いた。メニューを渡される前に「今日は鯖と豚汁」と言われた。つまり、その2択だ。
私は豚汁を選んだ。根菜がたくさん入っていて、味噌が濃い。ご飯が進む味だった。鯖にしておけばよかったかもしれない、と少し後悔した。昼の国分町は、夜とは別の街だ。静かで、少し投げやりで、それがいい。
牛タン通りで10時45分に並ぶ、という作戦
仙台に来たからには牛タンを食べる。これは外せない。
問題は行列だ。春休みシーズンの昼時は、仙台駅2階の「牛タン通り」に軒を連ねる各店の前に、11時を過ぎると列ができ始める。長いときは30分以上待つことになる。
10時45分に着く。これが分岐点だ。
開店直後の店内は静かで、焼き台の煙がまだ薄い。炭火の匂いが鼻に来る前の、鉄板が温まりかけている時間帯。席に案内されてすぐ、麦飯とテールスープが運ばれてきた。牛タンは厚切りで、噛むと塩気と脂が一緒に出てくる。外が寒かった分、スープの温度がありがたかった。
11時を過ぎた頃、店の外に列ができているのが窓越しに見えた。10分の差で、あちら側とこちら側に分かれた。
この日の行動記録は仙台 観光 1日 モデルプラン 記録ガイドにもまとめている。時間配分の参考にどうぞ。
広瀬川沿いで一日を終わらせる、その前にやること
牛タンを食べ終えて、広瀬川のほうへ歩いた。
川沿いの遊歩道は、春休みの観光客がほとんど来ない場所だ。地元の人が自転車で通り過ぎていく。川の水は3月末でもまだ冷たそうで、流れが速い。対岸の木々は芽吹き前の茶色のまま。夕方4時を過ぎると、光が低くなって川面がオレンジに染まり始める。
一日中歩いて、足が重い。ベンチに座って川を見ていた。特に何も考えていなかった。ただ、水の音だけが聞こえていた。
春休みの仙台を「混雑している」と思っている人は、たぶん動く時間帯を間違えている。人が集まる場所に、人が集まる時間に行けば混む。それだけのことだ。朝7時に駅を出て、9時前に城跡に立って、昼前に牛タンを食べて、夕方に川を見る。この順番で動けば、仙台は静かな街のままでいてくれる。
旅の記録を残しておきたいなら、TripCapのメモリー機能が使いやすい。場所ごとに写真とテキストをまとめておくと、次に来たときの下地になる。

